導入部分
HUNTER×HUNTER最長にして最高傑作との呼び声高い「キメラアント編」。人間を捕食する異形の生物キメラアントと、それに立ち向かうハンターたちの壮絶な戦いが描かれます。この編は、これまでの明るい冒険活劇とは一変し、生と死、人間性、そして愛とは何かを問いかける重厚な物語です。この記事では、キメラアント編の魅力を、ネタバレありで徹底的に語ります。王メルエムとコムギの物語、ゴンの暴走、ネテロ会長の最期。涙なしには読めない、HUNTER×HUNTER史上最も感動的なエピソードです。
✓ この記事でわかること
- キメラアントとは何か、その恐ろしさと物語の全貌
- 王メルエムとコムギの感動的な関係性
- ゴンがピトーに対して暴走した理由と代償
- ネテロ会長VSメルエムの最後の戦い
- なぜこの編が「最高傑作」と呼ばれるのか
📖 読了時間:約15分 | おすすめ度:★★★★★(史上最も泣ける神エピソード、覚悟して読んでください)
基本情報
【キメラアント編 基本情報】
- 収録:単行本18巻〜30巻(第186話〜第318話)
- 主要キャラ:ゴン、キルア、カイト、ネテロ会長、モラウ、ノヴ、シュート、ナックル、メルエム、ネフェルピトー、シャウアプフ、モントゥトゥユピー、コムギ
- テーマ:人間とは何か、生命の価値、親子の絆、憎しみと愛、犠牲と覚悟
- 舞台:NGL(ネオグリーンライフ)自治国、東ゴルドー共和国
あらすじ
※ここから先、キメラアント編のネタバレを含みます
グリードアイランドクリア後、ゴンとキルアはジンの弟子カイトと合流し、新種の生物調査に向かいます。しかし、そこで出会ったのは「キメラアント」という人間を捕食する凶悪な生物でした。
キメラアントは、食べた生物の遺伝子を取り込み、より強力な個体を生み出す恐ろしい種族。女王アントは人間を食べ続け、ついに人間の知能を持った兵隊アントを生み出します。そして、究極の個体「王」メルエムが誕生。
王メルエムは圧倒的な力を持ち、人間を「家畜」として扱います。しかし、盲目の軍儀少女コムギとの出会いが、メルエムの心を変えていきます。
一方、ゴンはカイトを守れなかった自責の念から、キメラアントへの激しい憎しみを募らせます。そして、カイトを殺した張本人ネフェルピトーとの戦いで、ゴンは全てを犠牲にして変貌を遂げます。
ネテロ会長率いるハンター協会の精鋭部隊は、メルエムを倒すために決死の作戦を展開。最終的に、ネテロは自らの命と引き換えに「貧者の薔薇(ミニチュアローズ)」という核兵器でメルエムを葬ります。
しかし、メルエムは死の間際、コムギと共に過ごし、初めて「愛」を知ります。二人の最期のシーンは、HUNTER×HUNTER史上最も感動的な場面として語り継がれています。
この編の見どころ
見どころ1:メルエムとコムギの物語
キメラアント編の最大の魅力は、間違いなく王メルエムと盲目の軍儀少女コムギの物語です。
メルエムの変化:
- 最初:人間を「家畜」として見下し、容赦なく殺す残虐な王
- コムギとの出会い:軍儀で何度も負け、初めて「敗北」と「敬意」を知る
- 最期:コムギへの愛に目覚め、彼女と共に静かに死を迎える
メルエムは、コムギと軍儀を打つうちに、勝敗を超えた何かを感じ始めます。自分より優れた存在(軍儀において)がいること。そして、その存在を守りたいという感情。これが「愛」でした。
最期のシーン、毒に侵されたメルエムが、コムギに「そばにいてくれるか?」と尋ねるシーン。そして二人で軍儀を打ちながら静かに死を迎える場面は、何度読んでも涙が止まりません。
見どころ2:ゴンの暴走と変貌
この編では、主人公ゴンの「狂気」が全開になります。
カイトを守れなかったゴンは、自分を激しく責めます。そして、カイトを殺したネフェルピトーへの憎しみを募らせます。
ゴンの変化:
- カイトの死を認められず、現実逃避
- ピトーへの憎しみで冷静さを失う
- 最終的に全てを犠牲にして「ゴンさん」に変貌
ゴンさん(大人ゴン)への変貌は、「全てを犠牲にした代償」です。念能力の制約と誓約を究極まで高め、命を削って力を得る。その姿は、もはや人間とは思えないほど恐ろしく、そして悲しい。
この暴走は、ゴンの純粋さの裏返しです。目的のためなら手段を選ばない。自分の命すら顧みない。この一途さが、時に恐ろしい結果を招きます。
見どころ3:ネテロ会長の覚悟と最期
ハンター協会会長ネテロは、この編で命を賭けてメルエムと戦います。
ネテロ vs メルエム:
- 百式観音:ネテロの念能力、圧倒的な速度と威力
- しかしメルエムには通じず、徐々に追い詰められる
- 最期は自爆、貧者の薔薇でメルエムを道連れに
ネテロは120歳を超える老人ですが、その戦闘力は圧倒的。長年の修行で培った念能力「百式観音」は、メルエムをも翻弄します。
しかし、メルエムの進化には追いつけず、ネテロは敗北を悟ります。そして最期の手段として、体内に仕込んだ核兵器「貧者の薔薇」を起動。自らの命と引き換えに、メルエムを倒します。
ネテロの最期の言葉「安らかに眠れ 人間の底知れぬ 悪意に怯えながらな」は、人間の本質を突いた名言です。
見どころ4:護衛軍の忠誠と葛藤
メルエムに仕える三体の護衛軍(ネフェルピトー、シャウアプフ、モントゥトゥユピー)も、それぞれに魅力的なキャラクターです。
ネフェルピトー:
- 猫のような外見の最強戦闘員
- カイトを殺し、ゴンの憎しみの対象に
- しかし、コムギを守るため、命をかけて治療する
シャウアプフ:
- 王への忠誠が最も強い
- メルエムがコムギに心を開くことを恐れ、策略を巡らせる
- 王のためなら何でもする狂信的な忠誠心
モントゥトゥユピー:
- 三体の中で最も純粋で誠実
- 戦いの中で成長し、敬意と名誉を重んじるようになる
護衛軍たちは、王への忠誠を貫きます。しかし、その忠誠の形は三者三様。この違いが、キャラクターの深みを与えています。
見どころ5:キルアの成長と覚悟
キルアは、この編で最も成長するキャラクターです。
グリードアイランド編でイルミの針を抜いたキルアは、もう逃げません。どんな強敵が相手でも、ゴンを守るために戦います。
キルアの成長:
- 電光石火(神速)の習得:究極の高速戦闘
- アルカとの再会:妹(弟?)アルカの能力でゴンを救う
- ゴンへの思い:友情を超えた絆
キルアがアルカの能力を使ってゴンを救うシーンは、キルアの覚悟を示しています。アルカの能力には恐ろしいリスクがありますが、キルアはゴンのために全てを賭けます。
印象に残った名シーン・名言
メルエムの「それを知った上で尚、今余が望むのは残された時間をコムギと過ごしたい、それだけだ」
毒に侵され、死を悟ったメルエムの言葉。王として生まれながら、最期は一個の生物として、愛する者と共にいたいと願う。この純粋な願いが、涙を誘います。
コムギの「おやすみなさい・・・メルエム・・・」
コムギの最期の言葉。メルエムと共に軍儀を打ちながら、静かに死を迎えます。王ではなく、名前で呼ぶこの言葉が、二人の絆の深さを物語ります。
ゴンの「オレはゴン=フリークス!!!カイトを取り戻すため、お前に会いに来た!!!!」
ピトーに対するゴンの宣言。カイトを取り戻すという執念が込められています。この一途な思いが、後の暴走に繋がります。ゴンの純粋さゆえの狂気が表れています。
ネテロの「蟻の王メルエム、お前さんは何にもわかっちゃいねぇよ・・・人間の底すら無い悪意(進化)を・・・!!」
自爆する前、ネテロがメルエムに告げる言葉。人間の持つ底知れぬ悪意(核兵器)を、メルエムは理解していない。皮肉と覚悟が込められた名言です。
キルアの「時々眩しすぎて真っすぐ見れないけど、それでもお前の、傍にいていいかな?」
キルアのゴンへの想い。ゴンは眩しすぎて見ていられないほど純粋だけど、それでもそばにいたい。この言葉が、キルアのゴンへの深い友情と覚悟を示しています。
モラウの「だが・・・それでも、100%勝つ気で闘う!!それが念使いの気概ってもんさ」
不利な状況でも諦めないモラウの覚悟。勝算が低くても、全力で勝ちを目指す。この戦士としての気概が、念使いの誇りを示しています。
キャラクター分析
メルエム:王から一個の生物へ
メルエムは、キメラアントの王として生まれ、圧倒的な力を持ちます。しかし、コムギとの出会いで「個」としての自我に目覚めます。
最初は人間を見下し、殺すことに何の躊躇もありませんでした。しかし、コムギに軍儀で負け続けることで、「自分より優れた存在」を認めます。そして、敬意と愛情を抱くようになります。
メルエムの死は、王としての死ではなく、一個の生物として、愛する者と共に生きた証でした。
ネフェルピトー:猫の騎士
ピトーは、最強の戦闘力を持つ護衛軍です。しかし、戦闘狂というわけではなく、王への忠誠と、コムギへの治療という使命に生きます。
カイトを殺したことで、ゴンの憎しみの対象となります。しかし、ピトーにとっては「王の命令」を果たしただけ。この視点の違いが、悲劇を生みます。
最期は、コムギを守るためゴンと戦い、敗れます。王への忠誠を貫いた騎士でした。
ゴン=フリークス:純粋さゆえの狂気
ゴンは、この編で「純粋さの危険性」を体現します。
カイトを守れなかった自責の念、ピトーへの憎しみ。全てが極端な方向に暴走します。そして、全てを犠牲にして「ゴンさん」に変貌。
この変貌は、ゴンの限界を超えた力ですが、同時に自己破壊でもありました。キルアやアルカの助けがなければ、ゴンは死んでいたでしょう。
キルア=ゾルディック:守護者としての覚悟
キルアは、ゴンを守るために全てを賭けます。
イルミの針を抜き、どんな強敵とも戦う覚悟を決めたキルア。電光石火(神速)を習得し、ユピーとも互角以上に戦います。
そして、暴走したゴンを救うため、アルカの能力を使います。この決断は、キルアのゴンへの深い愛情を示しています。
ネテロ会長:武人としての最期
ネテロは、120歳を超える老人ですが、その戦闘力は圧倒的です。
長年の修行で培った百式観音は、メルエムをも翻弄します。しかし、最終的には力及ばず、自爆という最期の手段を選びます。
ネテロの死は、武人としての覚悟と、人間の悪意の象徴でもありました。
考察・伏線ポイント
カイトの転生
死んだと思われたカイトですが、最終的に転生します。これはカイトの念能力「転生(クレイジースロット)」の効果と考えられます。死を回避する能力が、転生という形で発動したのでしょう。
ゴンの念能力喪失
ゴンさんへの変貌の代償として、ゴンは念能力を失います。この後、ゴンがどうやって念を取り戻すのか(あるいは取り戻さないのか)は、今後の物語の重要なテーマです。
アルカ(ナニカ)の正体
キルアの妹(弟?)アルカに憑いている「ナニカ」。その正体は明かされていませんが、暗黒大陸からの何かと推測されます。
貧者の薔薇の余波
メルエムを倒した核兵器「貧者の薔薇」。この余波が人間社会に与える影響は、今後の物語で重要になるかもしれません。
パリストンの真意
選挙編に繋がりますが、パリストンの行動の真意は謎に包まれています。キメラアント編でも、彼の策略が見え隠れします。
他の編との比較
キメラアント編は、HUNTER×HUNTERの中でも最長かつ最も重厚な編です。
これまでの明るい冒険活劇とは一変し、生と死、人間性、愛とは何かを問いかける哲学的な物語になっています。
戦闘シーンも、これまでとは比べ物にならないほど緻密で長い。一つの戦いに何話もかけ、心理描写や戦略の駆け引きを丁寧に描きます。
また、主人公ゴンが「狂気」に陥るという、少年漫画としては異例の展開。これまでの純粋で明るいゴンのイメージが、一変します。
個人的には、HUNTER×HUNTERの最高傑作だと思います。メルエムとコムギの物語は、漫画史に残る名エピソード。何度読んでも涙が止まりません。
こんな人におすすめ:
- 重厚なストーリーが好きな人
- 人間性や哲学的テーマに興味がある人
- 感動的な物語を求める人
- 緻密な心理描写や戦略が好きな人
- HUNTER×HUNTERの真髄を味わいたい人
キメラアント編を読むなら
キメラアント編は以下の巻に収録されています。
- HUNTER×HUNTER 18巻
- HUNTER×HUNTER 19巻
- HUNTER×HUNTER 20巻
- HUNTER×HUNTER 21巻
- HUNTER×HUNTER 22巻
- HUNTER×HUNTER 23巻
- HUNTER×HUNTER 24巻
- HUNTER×HUNTER 25巻
- HUNTER×HUNTER 26巻
- HUNTER×HUNTER 27巻
- HUNTER×HUNTER 28巻
- HUNTER×HUNTER 29巻
- HUNTER×HUNTER 30巻
まとめ
キメラアント編は、HUNTER×HUNTER最長にして最高傑作の呼び声高い章でした。
メルエムとコムギの愛の物語、ゴンの暴走と狂気、ネテロ会長の覚悟と最期。全てが圧倒的なクオリティで描かれています。
特に、メルエムとコムギの最期のシーンは、何度読んでも涙が止まりません。王として生まれたメルエムが、最期は一個の生物として、愛する者と共に静かに死を迎える。この美しさと悲しさは、漫画史に残る名場面です。
ゴンの暴走も衝撃的でした。純粋さゆえの狂気。目的のためなら全てを犠牲にする一途さ。この危険性を、冨樫先生は見事に描ききりました。
次の会長選挙編では、ゴンの復活とキルアとアルカの物語、そしてハンター協会の新たな体制が描かれます。キメラアント編の重厚さとは違い、比較的短く、次の展開への布石となる編です。
🔗 関連記事リンク(内部リンク)
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